三連休の前日とあってゆったりムードが漂うZepp Sendai。
1階も椅子席で、
2階の後ろは立ち見のお客さんでいっぱいでした。
ハナレグミこと永積タカシさんが
仙台育ちの写真家・中村ハルコさんの写真集
「光の音」に出会い作り上げたアルバム「あいのわ」。
ハルコさんが見た風景がハナレグミの音楽に循環して、わたしたちへ。
ゲストには仙台出身のタップダンサー・熊谷和徳さんも加わり
「うた×写真×タップ」の素敵な夜がはじまりました。
仙台と東京2公演のみのスペシャルなステージです。
客電が落ちると普通はわーっとなりますが、
今日ばかりはひっそりと静まり返る会場。
何が起こるかわからない、そんな雰囲気がありました。
ステージ前方の幕に写し出さているのは2本の木の写真。
SEが流れているのかと思いきや幕のうしろ、
ステージから流れてきていることがすぐにわかりました。
アンビエントな雰囲気。鳥の鳴き声のようでもあり、木に向かって
森の奥へと足を踏み入れてしまったかのような感覚がありました。
静かに動き出す今夜のステージ。ステージ前方に薄い幕があり、
そこに中村ハルコさんの生命力溢れる写真が映し出されています。
幕のうしろで、ひとりアコースティックギターを鳴らし
"PEOPLE GET READY”を歌う永積さんの姿が
ぼんやりと浮かびあがります。
揺れる赤い花、ハグしている写真、
芝生の上に足をなげだして笑い転げている赤いワンピースの女の子。
映し出される写真の数々は、
生前、中村ハルコさんが恋したイタリア・トスカーナ地方の風景とひと、暮らし。
そこに重なる「あいのわ」はどうしようもなくやさしかったです。
やさしくてせつなくてくすぐったくて涙がでます。
"さぁはじめよう~"と歌いだす音タイムでは
坂道が青空までつながっているように見える一枚が映し出されます。
と同時に、ぐずった赤ちゃんが"いやいやいやぁ~"とふにゃふにゃした声を出す
ハプニングがありましたが、それはステージ上の永積さんにも聞こえていたようで、
"赤子とのセッション…最高ですね”なんてフォローしていました。
不思議と、あの空間になじんでいてほっこりしてしまいました。
「中村ハルコさんとのセッション…ゆっくりたっぷりやりたいと
思います」という言葉とともに、進むライブ。
この日のメンバーはツアーでもおなじみの、
ハーモニカやキーボードの曽我大穂さん(from CINEMA dub MONKS)と
ベースにガンジー西垣さんを加えた3人構成で、
アコースティックを基調としたサウンドです。
“Three Litle Birds~Don't think twice it’s all”と続くと
ステージとお客さんの間の幕が取り払われて
今度は、ステージ奥にあるスクリーンに写真が映し出されていました。
ライブがはじまって1時間くらいしたところで
1階のセンターステージから聞こえてきた軽快なリズム。
2メートル四方ほどの小さいステージの上に登場したのは
スペシャルゲスト、仙台出身のタップダンサー・熊谷和徳さんです。
ハットを被り、オレンジ色のシャツ姿でリズムを刻む熊谷さんの
身のこなしに、足元に、注がれる視線。
途中永積さんもセンターステージに上がり、
ふたりが向き合ってのセッションが行われました。
草履なのにステップを踏もうとするおちゃめな永積さん。
大画面に写しだされる熊谷さんの舞うような足元。
"踊る人たち"ではお客さんもたちあがってクラップ!
熊谷さんが手でさらさらっとステージに砂をまいてはじまった
“きみはぼくのともだち”では一転、やさしいうたとリズムに吸い込まれていきます。
ステージにこすれる砂の音が波のようにも聞こえてきました。
センターステージからふたたびステージに戻り、
“あいまいにあまい愛のまにまに”“明日天気になれ”では
揺れながら思わず一緒に口ずさんでしまいます。
大きな口でパスタをたべようとしている女の子の写真にむかって、
よしよし、となでる永積さんがいたりして。
『あいのわをつくるときにハルコさんの写真集をみながら
レコーディングしていた。答えを"こういう感じじゃん“っていわれた感じで。
光と影を歌うときおなかの大きなポートレートをみながら写真をみながら
うたったんだけど…3回歌ったらなんかふわっとあったんだよね・・・
自分なりのコラボレートができたというか』
私の位置からはライブの後半になって気づいたのですが、
ステージ上だけでなく会場横の壁にも布があって、
そこにステージと同じ写真が写しだされていました。
きっと永積さんも見ながら歌いたかったのだろうな、と感じました。
でも、”光と影“ではレコーディングのときに見ていたという、
ハルコさんのポートレートではない写真が映し出されました。
ここにもきっと何か思いがあったのだろうなぁ。
『ハルコさんの写真からたくさんの人と出会った。感謝感謝です』
という気持のこもった言葉のあと、"光と影”へ。
照れ隠しのように『キイテクダサイ』をカタコト風に言う永積さん。
アンコールでは『君のタップをふるさとに刻んでよ!』という言葉で
熊谷さんが再び登場、永積さんがドラムをたたいたり、
お誕生日という曽我さんのためにそれぞれソロのプレゼントがあったり、
最後はモノクロの写真で"あいのこども”が演奏されました。
3時間を越えるステージでずっと感じていた、静と動、昼と夜、光と影。
後半に進むにつれ、今夜のステージをハルコさんならどんな写真を
撮るんだろうと考えている自分がいました。
心にやきつけたい、一瞬一瞬の重なりの連続でした。
※このレポはDate fmネット会員DNAメールマガジンに
掲載したものに加筆したものです。