こんばんは。
いま、どのような場所でこれを見てくださっているのでしょうか。
まだ電気が通っていないところに
リスナーさんや友人がたくさんいると分かりつつも呼びかけたくなります。
寒くないですか。
水・食料は足りていますか。
体調は大丈夫ですか。無理しすぎていませんか。
3月11日以来、今日まで
味わったことのない時間の流れを体験しました。
必死で、夢中で、何曜日か忘れそうになるくらい。
はじめての連続には
気持がついていかないことが多々ありました。
いまだに余震も多く、夜中に懐中電灯を
にぎりしめることもよくあります。
地下鉄が動いて通勤にとても助かりますが、
どこかで「もしまた大きな揺れが来たら」という
思いが頭をかすめます。
ガソリンはまだ十分ではなく、何時間並んでも
今週末も入れることができませんでした。
少しずつ店が開いてきましたが、
ちょっとしたものを買うにも長い列でくたくたになります。
津波被害のなかった場所でさえ
少し前まで深刻な食糧不足で
雪が舞う仙台の街をあんなに心細い気持で歩いたことはありません。
ひびや亀裂、壊れた箇所。家はあの日一日だけで、
10年分はくたびれたように思います。
でも、わたしの状況はまだまだいいほうで、
想像を絶するほどつらい思いをされている方が本当に多いのです。
自分も被災者でありながら、
悲惨な状況を目の当たりにするたび、罪悪感にさいなまれていました。
私の家には震災直後から友人が避難し、
水と電気が通ってからは
親戚・友人・仕事の仲間たちがシャワーや少しばかりの食事をしにやってきてくれました。
その人たちを少しでも助けられることだけがわたしの救いでしたが
その一方でみんながもってくる体験談やその目で見た話が辛すぎて
どんどん落ち込んでしまいました。
話すことがそのひとにとってひとつの癒しになるなら話してほしいと思いながら
話がずっと頭から離れず、睡眠を取ると変な夢ばかりみました。
でも先週、番組をお届けしながら、
リスナーのみなさんのメッセージを読んでいて、私自身
気付かされ、方向転換をはからなくては、と強く思いました。
まずは津波被害のなかった場所で罪悪感や無力感で苦しい思いをしているひとが
本当に多くいらっしゃることがわかりました。
「これをやりなさい」と指示されたらきっとそれを一生懸命やる準備はあるのに
その指示がないことは、辛く苦しいことでもあります。でも自分で考えるしか
ないということが未曾有の大震災で多くのひとが直面していることなんですね。
そして、なるべく普通に近づけよう、と心がけている方々が
すごく多いこともメッセージを読んでいて思いました。
寄り添うためには、まず自分を癒さなくてはなりません。
そのためには普通の生活になるべく近づけてバランスをとって生活しないと
自分が倒れてしまうんですよね。
そしてもうひとつ、今になってこの2週間を振り返ると、
「ひとのこころって変わらないんだな」と思うことがたくさんありました。
実家が倒壊してしまった友人。
いつもみたいにユーモアを発揮して周りをくすりとさせます。
思い出のつまった家や車が流されてしまった友人。
いつもみたいに、ポジティブなことばにおもしろいことを混ぜて伝えてくれます。
安否確認するのが正直怖くてずっと連絡できなかった先輩。
お父さんがいまだ行方不明だそうですが、やっぱり先輩はいつもの先輩で
わたしを励ましてばかり。
仕事帰り、クリスロードで会った親戚のおじちゃんとおばちゃん。
家も車もすべて流されて大変な思いをしているのに
クリスロードで店頭販売をしていた魚を急いで買って私に持たせてくれました。
街も、
くらしも、
大きく変わってしまったけれど。
ひとの心は大震災を経験してもこんなにもかわらないものかと。
やさしいひとはやさしいままです。
おもしろいひとはいつものくせでおもしろいことをいってくれます。
ひとってつよい。
元気のでるひとから元気をだして、
こころが折れそうになっているひとが近くにいたら支えていきたいですね。
誰もが経験したことのない大震災、
これからどんな道が待っているのか誰もわからないけれど、
きっとわたしたちはやっていけます。
震災直後から、崩れた家具・家電やとびだした大量のCD・本で
床が見えない状態になっていた私の部屋。
それでもひとつだけ毎日やっていたのは
その部屋からその日番組でかけたいCDを探し出して持ってくること。
選曲は変わってしまったけれど、
その日の気分でCDを持っていく、これは私の”日常”です。
しゃべり手のくせに言葉が見つからないことばかり。
音楽の力を借りて、メッセージを送りつづけます。
阪神淡路大震災を経験した先輩にお話を聞きました。
復興していくとき、街には工事の音が響いていたそうです。
未来の街につながる音だとしても、日々の中では大変な
騒音として響くことも予想されます。
そんな中ではとくに
音楽が心に癒しをもたらして、
だれかの支えとなってくれることを信じて
届け続けていきたいと思っています。
そして、県内の被災地では時間がたつにつれ、
被害状況によって番組を聞いている方の状況にますます開きがあります。
すこしずつ”普段”を取り戻すときにもお供させてもらえたら、と思いますし、
一方で、復興までの道のりは山登りと同じだと思っています。
わたしたちはひとつのパーティー。
大変な思いをしながら列の最後にゆっくりしたペースで一歩一歩すすむ
ひとにずっと心をむけて放送をしていきます。
さあ、新しい一週間がはじまります。
いまこれを読んでくださっているかたへ。
生きていてくれて、ほんとうにほんとうにありがとう!
がんばりましょうね!
【冬から春へ。】