震災から2ヶ月が経った昨日、中継帰りの車の中で
午後2時46分を迎えました。
スタジオの井上さんが紹介するリクエスト、
みなさんの想いに心揺さぶられました。
その、昨日の中継でおじゃました、産業道路、
宮城野区福室の手作りおにぎりと調理パンの店「青空」さん。
震災の翌日、お店の片付けをしているところに
お客さんが「おにぎりないんですか?」と訪ねてこられたそうで、
その時から店長の阿部さんは夜遅くまでろうそくの火を頼りに
1000個のおにぎりを数日間にぎり続けたそうです。
私の目の前にあった阿部さんの手。
自分の母親ほどの年上の方に、失礼かもしれませんが
阿部さんの手はちいさくてかわいい手でした。
あんな小さな手で1000個のおにぎりを握り続けて
手がパンパンに腫れたというのは、容易に想像ができます。
想いひとつで、握り続けたのだと思いました。
2ヶ月目にお会いできたことも縁を感じましたが、
震災当初、いつものお店が開いていることが希望そのものでした。
きっと地域のみなさんは勇気付けられたに違いありませんし、
実際後日お礼にいらっしゃる方も多いと伺いました。
2ヶ月目を迎えて、私は最近
”普通”ということをよく考えるようになりました。
”普通”や”あたりまえ”だと思っていたことが実はそうではないと気づかされ、
マイナスから”普通”の状態に戻すまでたくさんの力が注がれました。
ライフラインはもちろんですが、店が開いてきた当初、
仙台市内中心部は開店時間を大幅に短縮していて、
夕方6時にもなれば、街なかから追い出されるような感覚でした。
もちろん、お店の方も努力しているし、お店が開いているだけで
ありがたいと思っていました。
でも一方で、普段何気なく寄り道したりお茶を飲んだりすることで
自分がバランスをとっていたことに気づかされ、
今時間が経って、たとえば仕事帰りに寄り道ができる場所があることで
ほっとしている自分がいます。
それはいままで意識することさえなかった、
自分にとってかけがえのない”普通”の時間。
先週末、わたしは震災後はじめて東北を離れ、
北陸は金沢と羽咋に行って来ました。
金沢でとてもお世話になり、今回のことでもとても心配してくださった方の
結婚式があり、半年も前からお知らせいただいていたので何としてでも
元気な顔をみせたいし、心からお祝いしてきたいと思っていました。
先輩たちと4人で司会をさせていただき、感謝の思いでいっぱいになりました。
そして金沢では、以前の勤務先HELLO FIVE エフエム石川で
ずっとエールを送ってくださっている、
アナウンサー木村雅幸さんの番組『FROM K!』にも出演させていただきました。
宮城の今の状況を伝えるとともに、
J-SIDE STATIONに寄せてくださったメッセージのお礼も
直接伝えることができました。
金沢に降り立って思ったのは
”ほっとした”ということなんです。
今、生まれたふるさとである宮城が大変な状況のなか
社会人として育てていただいたもうひとつのふるさと石川県が元気で、
変わらないいつも通りの美しいすがたであるということに、とてもほっとしました。
そして仙台を歩いているとき、いつも考え事でいっぱいで
”がんばろう” ”負けるな”という文字を目にしながら
心がざわざわしたままだったということも思いました。
最近、新聞で、沿岸部の方が
『”がんばろう”というTシャツを着ているひとたちを見て
少し違和感があって、何をがんばれば、と思う』と
率直な意見を述べていました。
『普通にしてくれるのが嬉しい』とも。
2ヶ月たって当然疲れもあります。
少しでも心が上向きになることを意識しながらも
”普通”を届けることも同じくらい大事だと思うようになりました。
わたしが金沢で感じたように
”普通”が安心感となってエネルギーが沸いてくることが
ある気がします。
そして、”普通”がいまだ遠くにある方であれば
なおさらそうなのではないか、と思うようになりました。
小さな”普通”を積み重ねるために、ラジオができることが
ある、そう心に言い聞かせて過ごしています。
そして、もうひとつ思ったことがあります。
番組に届く福島へのメッセージのなかに
今日はハガキでのメッセージがありました。
仙台でもいわれのない差別を受けてしまったという事実。
いじめのような事実がひどくて、全部読めませんでした。
紹介しながら、そんなことが
ここ仙台で起こっているなんて、くやしくて仕方ありませんでした。
福島から仙台に遊びに来た方たち。
休日に、もしかしたら
ひとときの”普通”を求めてやってきたかもしれないのに。
先日金沢の『FROM K!』のスタジオで1曲、かけていただきました。
宮城でしゃべらせていただいているパーソナリティーなのだから
宮城の曲、と思いましたが、わたしが選んだのは
猪苗代ズの”I love you and I need you ふくしま”です。
宮城の人は、宮城だけがよくなればいいなんて思っていません。
それは番組でリスナーのみなさんとコミュニケーションしていれば
いつも感じることです。その思いで選曲しました。
わたし自身の友達や先輩にも福島がふるさとという方、たくさんいます。
きもちは一緒です、福島。
情の深い石川県の方々にも、
それぞれのふるさとを思いうかべてほしいと思ってかけてもらいました。
2ヶ月過ぎて思います。
この大震災でわたしたちが失ったものは計り知れないけれど、
助け合わなくてはやっていけない状況のなかで
親切をすることが当たり前になりました。
はじめて声をかけてくれた近所のひと。
お店の列にならんでいたときに話した見ず知らずのひと。
遠くから思ってくれたひと、祈ってくれたひと。
10数年ぶりに連絡をくれた友人。
照れずに声をかけることも。
素直にありがとうということも。
ゆずりあうことも。
この大震災を経験して
親切をしやすくなったと思うんです。
乗り越える頃には、
親切が”普通”になっているんじゃないか。
そんな心が作る宮城はきっともっとあったかい街に
なっているんじゃないかと思っています。
だから、少しずつでも全国のひとに東北を楽しみに来てほしいです。
最後に、金沢で見つけたヤマザクラを。
花言葉は”あなたに微笑む”です。