日曜日の昼下がり、わくわくしてドアをあけたのは
大町にあるカフェ、AReT(アレット)。
カウンター越しに全部が見渡せるようになった店内には
様々なスタイルの椅子が心地よく並べられ、
開演を待つばかりになっていました。
シンプルな瓶に詰められた色とりどりの食材。
少し目線を高くするとふたに穴のあいたピクルスの瓶が
電球のかさになっていたりして。
パリのアパルトマンはこんな感じかしら、なんて想像してみたり。
そんな、一目で居心地いい空間とわかるカフェに集まっていたのは
子どもたちとお父さんお母さんたち。“プレママ”なんて言い方をされる
そうですが、もうすぐママになる女性もいました。
ボーカルとアコースティックギターのユニット、
ビューティフルハミングバードによる、
こどもとママのためのcafeライブのはじまりはじまりです。
ビューティフルハミングバードは高校・大学の同級生だったふたり、
小池光子さん(ボーカル)と田畑伸明さん(アコースティックギター)が
2002年に結成したユニットです。3枚のオリジナルアルバムをはじめ
カバーミニアルバムや数多くのテレビCMにも参加しています。
花のコサージュがついた帽子を被って登場した小池さんも、
ゆっくりと会場を見渡した田畑さんも、笑顔。こどもたちも、目の前で
何が始まるんだろう、と不思議そうにしていたり、目をキラキラさせて
見つめています。
きらめくギターの音色と、空気をたっぷりふくんだやわらかなやわらかな声。
ふたりとも、おきゃくさんの子どもと目線を合わせながら演奏していきます。
今回は絵本を2冊セレクトして、壁に映し出す絵本にあわせていろんな音を
出しながら、小池さんが絵本を読み、
さらには絵本を題材にしたオリジナルの曲をはさみつつのライブでした。
絵本は、まえをけいこ。さんの「ひゃっこちゃん」。
なんでも百個、の女の子で、色鉛筆で書かれた絵に出てくるのは
100個のパンやアイスクリーム、風船。何でも百個。
「ひゃっこ」ということばが何度も繰り返されるので、
独特のリズムを作り出しています。
もう一冊の絵本ビビッドな色合いが綺麗な、
tupera tupera著(亀山達矢さんと中川敦子さんによるユニット)
「しましまじま」。こちらは、何でもしましまの島のお話で、
思わず声に出して繰り返したくなる楽しい言葉のリズムでした。
あとから聞いた話では、他のcaféライブの会場に比べて子どもたちの年齢が
さらに若年層だったそうですが、
一緒に“あー”と歌っていた1歳の赤ちゃんだったり、
ソファでブリッジしながら体を揺らしている女の子、
お母さんのコップに入った炭酸を飲んで何回も
苦い顔をしながら“ぷはぁ~”と音をたてている男の子(笑)。
かわいい子どもたちが発するすべての音をBGMにして
演奏は続いていきます。そして小池さんが魔法のように
次々にとりだす楽器、鉄琴や打楽器やいろいろな笛。
名前もつかないような、偶然楽器になったようなものたちが
絶妙なタイミングで登場しては、子ども達の目線をくぎ付けにしていました。
大人の心もだいぶやわらかくなったところへ演奏されたのが、
耳の中にまちができたら、という想像で作られた曲。
音楽をつかさどる人々が住んでいる、
魔女の宅急便にでてくるような街の景色を描く
ビューティフルハミングバード。
想像力を遠くへ飛ばしてくれるライブが大好きですが、
子どものころに持っていた想像力をちょっとだけ
思い出させてくれるような時間でもありました。
大人の想像力も眠っているだけなのかも。
やさしい気持ちで広瀬通を歩いた帰り道でした。
10月19日にはビューティフルハミングバードのアルバム
“HORIZON”がリリースされます。
意外なゲストも参加していたりして、
おふたりの音楽的つながりの深さを感じ、
そして奥行きのある世界にときめきますよ!
地平線の向こうに聞こえてくる音を、ぜひ。
■□■この文章は9月26日に発行
Date fmメール会員DNA向けメールマガジンに掲載されたものです■□■