“メンバー3人が加わった新生くるり”。
この夏フジロックやARABAKIなどに登場したくるりを
とりまいていたこのフレーズ。夏フェスでのセットリストと
グルーヴ感たっぷりの演奏は
お客さんの期待に応えてくれるものだっただけに、
“新生"くるりの仙台ワンマンライブを楽しみにしていました。
その新生くるりは、
オリジナルメンバーの岸田繁さん(Vo&Gt)、
佐藤征史さん(Ba&Vo)に加えて、
ギターに吉田省念さん、ドラムとパーカッションに田中
佑司さん、そして紅一点、
トランペットにファンファンさんという5人編成に
なりました。
まだ見慣れないフォーメーションにわくわくしつつ、
そしてライブが進むにつれて、これが"新生“くるりなんだと
じわじわ実感します。
おなじみの曲がギターソロがトランペットだったり
楽器がかわると同じメロディーでも当然印象がかわるし、
もっと言えば当然弾き手がかわれば色合いが変わります。
ライブって、音楽ってやっぱりおもしろい!
ファンファンさんのトランペットが躍動感あって素敵。
途中ボーカル交代で吉田さんが
「THANK YOU MY GIRL」を歌ったのには驚きました。
吉田さんがボーカルをやる可能性についてインタビューで話していた
けれど、まさか以前からある曲で、とは思いませんでした。どよめく会場。
さらには「ワールズエンド・スーパーノヴァ」と「ワンダーフォーゲル」を
ハンドマイクでほえるように歌う岸田さんが新鮮すぎました。
ニューアルバムのツアーではないので選曲も
かなりワクワクするものだったのですが、
特に印象深かった曲の中には「ブレーメン」もありました。
この編成だとオーケストラと作った2007年のアルバム
「ワルツを踊れ」も出来てしまうんですね。
この曲はかつて岸田さんが説明していたのを思い出すと
"仮想の物語で、音楽家の少年が志半ばで亡くなって街が廃れて復興して、
街に戻ってきた人たちが少年の作った歌を歌う”という曲なんです。
今、闘っているふるさとに重ねて、胸があつくなりました。
そしてワンマンライブに足を運びたいと思っていた
もうひとつの大きな理由が、
震災後からの動きにあります。
本当にたくさんのミュージシャンが支援に動いてくれていますが、
くるりもそうです。彼らも本当に思いを行動に移してくれています。
くるり主催のフェス「京都音楽博覧会」では
東北の大漁旗をステージに掲げました。今回のツアーグッズのひとつ、
バッジは南相馬の工場で作られたものです。そして、とても驚くことが
ありました。それは「やっぺす石巻」という曲を作ったのです。
”風は冷たい人はあたたかい”
“今こそがんばっちゃ石巻”“万石浦の潮の香り”
といった地名や方言が盛り込まれた民謡調の曲。
実は石川さゆりさんがくるりに作曲を依頼したもので、
歌詞は地元のみなさんが
書いた言葉を岸田さんがつなげたのだそうです。
最初は驚きとともに集中して聞いていた会場。
びっくりしながらもだんだんと手拍子がおき、
いつのまにかその手拍子がこの日一番大きなものになり、
そして歌が終わってもいつ止めるべきなのか分からないくらい
拍手をしていたい気持ちになったのでした。
あのとき一度聞いただけなのに、
今思い出しながらこれを書いているとメロディーが頭に浮かんでくるほど、
一度聞いたら忘れられないメロディーでした。そしてこの曲は次の日、
11月10日に石巻市開成の仮設住宅でも披露され、このときの新聞記事には
「石巻復興節」と紹介されていました。
アンコールでは"歌いたくなった”と「ばらの花」をギター一本で披露してくれた
岸田さん。用意されていない、アンコールらしいアンコールが大好き。
ツアーは12月8日に新木場STUDIO COASTでファイナルを迎えますが
その前には上海とソウルでの公演もあります。
新生くるりが海外でもひびいていきます。
■□■このライブレポートはDate fmネット会員DNAのみなさん
向けのメールマガジンに載せたものです。
ここへはツアーの終了後に掲載しています■□■