一筋の雲、
草原をなでていく風、
なでた髪の毛のやわらかさ。
人間の感覚がとらえるもの以上に
絵が美しいというのは
『風立ちぬ』の余韻の中でいま思い出している
シーンの数々を言うのかもしれません。
ストーリーでいえば、”大人向け”という声も聞きますが、
見る人にゆだねられる部分がとても多いという意味で
そう思いました。
菜穂子が心ふるわせるシーンにはそのひだひだの
動きが伝わるよう。
「ひこうき雲」はこの映画のために
生みだされたのではないかと思うほど。
主人公・二郎の誠実さや
職人気質はそのまま庵野監督の
声の出演の魅力だと思います。
ただ訓練している人は別として、その人の生き方と
重ねた年月が『声』の魅力だとしたら
年齢相応の声が出るはず。
どうしてもそこだけはため息です。